愛すべきバカ映画/ドゥニ・ヴィルヌーヴ「華麗なる晩餐」
意味のある妄想オチってめずらしー/ドゥニ・ヴィルヌーヴ「複製された男」
世の中の大多数の人は妄想オチを嫌っている(はず)。妄想がセーフならなんでもありじゃねえかとか、いろいろな批判方法はあると思うのだけど、それらの根底には共通する意識がある。それは、妄想というパターンが何かを表現するための手段ではなく、目的となってしまっているという問題だろう。
本作は珍しく、その問題をうまく回避している。ネタバ本作で登場する妄想は、明確な手段として存分に活かされている。これくらいうまくできた妄想って『ぼくは麻理のなか』ぐらいしかぼくは挙げられない。
続きを読むやっぱ女子高生と付き合おうとする先生なんてクズだよね~/やまもり三香『ひるなかの流星(1~12)』
やっぱり、女子高生と付き合おうとする先生なんてクズだと思う。もちろん、2次元のなかでくらいそういうことがあってもいいじゃん、というひとの気持ちもわからなくはないんだけど。でもぼくは、そんなにナイーブに現実とお話の中の世界を区別する、というのにはやや抵抗がある(少女漫画的な世界が、出版社のえらそーなおっさんのイデオロギーをけっこう反映している、みたいな話も聞いたことありますし)。
だから、読んでる途中はだいぶモヤモヤしたし、最終巻ですずめが沖縄から東京に戻ったところを読んで「あー……」と思ってしまった。でもラストまで読んでみたら、いやーめでたしめでたし。馬村とくっついてくれてほんとうによかった。このカタルシスは(良くも悪くも)他ではなかなか味わえない。
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両手に舞城王太郎を吸い込んでできあがった異形のマンガ/大暮維人、舞城王太郎『バイオーグ・トリニティ(1~14)』
バイオーグ・トリニティ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 大暮維人,舞城王太郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/08/19
- メディア: Kindle版
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まさに「舞城王太郎のコミカライズ」。愛は祈りだだの世界は密室でできているだの、舞城の小説を想起させる言葉がじゃんじゃん出てくるというのもあり、ファンとしては嬉しい限り。
ただ……残念ながら、うまくまとまっているとは言い難い側面もある。舞城の小説を両手に吸い込んだら、まるでこのマンガにでてきているキャラクターみたいにいびつな話になっちゃった、といった感じ。読んでる分にはわりと楽しいのだけど、読み終わって振り返ってみるとなんだったんだあれ? みたいになっちゃう。
その一方で、キャラクターをはじめとする絵の力はすさまじい。モノを吸い込んだヒトのグロテスクっぷりは、まさに(いい意味で)舞城の小説のコミカライズ。さらに、カジュアルなエロがうまくバランスをとっている感じがはあり、エログロナンセンスのお手本みたいになってる。
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