いっそ反緊縮エッセイアンソロジー出してほしい/松尾匡編『「反緊縮!」宣言』

「反緊縮! 」宣言

「反緊縮! 」宣言

まあ松尾匡編ということで、路線は『この経済政策が民主主義を救う』とか『そろ左派』とかと同じ。まー経済のおべんきょうしたくて読むなら他の松尾の本とかでええやんという感じはしていて、勉強になったのは梶谷壊の中国における反緊縮政策の解説くらいかなあ。

その一方で、エッセイ集としてはアリ。とくに良かったのが岸政彦「他者を殴る棒」で、ここ数年の排外主義や弱者差別が反緊縮に綺麗に接続されるという指摘は本当にすばらしい。薔薇マーク立ち上げの経緯とかもおもしろい。

だったらいっそ、エッセイ集として特化したほうが、類書との差別化もできてよかったのでは。そうなると反緊縮エッセイストの女王ブレイディみかこは当然ほしい。有名人枠としては麻木久仁子勝間和代もいてほしいかな(客寄せパンダ気味ではあるが)。学者だと稲葉振一郎とかはほしいし、井上智洋にも(本書のようなヘリマネの話だけでなく)AIと絡めた話とかもしてほしい。政治家方面では山本太郎はもちろんだが、宇都宮健児あたりが書いてもおもしろそう。文学方面だと斎藤美奈子は絶対にいてほしいし、柴崎友香や木下古栗あたりの短編小説があったらだいぶお得な感じになるだろう。そんな本、出ないかなあ……。

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いろいろな粗を「究極のポケモン」で誤魔化したゲーム/「ポケットモンスター シールド」

ポケットモンスター シールド -Switch

ポケットモンスター シールド -Switch

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 任天堂
  • 発売日: 2019/11/15
  • メディア: Video Game

まあ不満はいろいろある。ポケモンのリストラは最初はまあしょうがないかなーと思っていたけど、サンムーンのモデルの流用と聞いてだいぶ印象が変わったし、新ポケモンの一部のデザインはかなり受け入れがたい。ダイマックスのシステムはまあいいとして、キョダイマックスはストーリーでも対戦でもなかなか使えないのも、そうする意味あった?? となる。

が、さすがに究極のポケモンという感じはあり、サンムーンからのすさまじいグラフィックの進化に圧倒されてしまった。とくに街並みの雰囲気の作り込みとワイルドエリアは本当に素晴らしく、ポケモンの世界がよりリアルに感じられた。ストーリーのほどよい薄さなども含め、本編プレイ中の快適さはまさしく最高のポケモンだった(いやまあそうなってもらわないと困るんだけどさ)。

まあなんというか、いろいろと不幸なゲームかなあと。事前に新作の情報やリークをシャットアウトしていたポケモン信者ほど剣盾が許せなくなり、リストラとか波平とか化石叩いていた人ほど剣盾を楽しめるのは、この世の不条理って感じがする。

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ユニバーサルデザインは障害者だけでなく健常者の利益にもなる

webtan.impress.co.jp

 

 webアクセシビリティについてのこの記事を読んであらためて気づいたのは、障害者にとって使いやすいwebサイトは、健常者にとっても使いやすいんだなということ。色覚異常者のためのアクセシビリティ対応をすると、日差しで画面が見づらくなることが減るとか、まったく知らなかった。障害者への配慮のためにwebアクセシビリティも勉強しなきゃ、とは前々から思っていたが、それが健常者の利益にもなるというのは全然意識していなかった。

 でもよくよく考えてみれば、webアクセシビリティに限らずユニバーサルデザイン一般はそういうもののはず。駅のホームに転落防止ドアを設置すれば、視覚障害者だけでなく健常者も線路に落ちる危険がなくなるし、段差のない道は車椅子の人だけでなく健常者にとっても歩きやすい。シャンプーとリンスの容器を触れば、健常者は頭洗っている最中に目を瞑ったままどっちがシャンプーかを判別できる。

 ということでユニバーサルデザインだいじ、webアクセシビリティだいじ。なるべくはやく勉強しなきゃという思いが高まった。

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鈴木たかのりほか『Pythonエンジニア ファーストブック』読書メモ②

Pythonエンジニア ファーストブック

Pythonエンジニア ファーストブック

鈴木たかのりほか『Pythonエンジニア ファーストブック』の読書メモ
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※データ分析の情報がほしかったため、第6章はほぼ目を通していません

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鈴木たかのりほか『Pythonエンジニア ファーストブック』読書メモ①

Pythonエンジニア ファーストブック

Pythonエンジニア ファーストブック

鈴木たかのりほか『Pythonエンジニア ファーストブック』の読書メモ
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先制パンチ喰らって頭がぐらぐらする短編集/村田沙耶香『生命式』

生命式

生命式

 

 村田沙耶香の本領発揮といった感じの短編集。まあアイデア一発勝負というか出オチ感はあるんだが、それでもちゃーんと印象に残るあたり、村田の地力の高さが伺える。全体的にコンパクトにまとまっているのもぼく好み。

特に面白かったのはやはり表題作の「生命式」で、もったいないから死体を食べるというぶっとんだ設定と、セックスだとか妊娠だとか常識の恣意性だとか村田沙耶香お得意のテーマがうまく融合している。その他は、やたら小ネタの多い「素敵な素材」、よくあるモノフェチ小説かと思ったら意外なところに着地する「かぜのこいびと」、ペルソナの目まぐるしい使い分けの書き方がクセになる「孵化」がおもしろかった。