史料から見えてくるボンクラ信長の実像/金子拓『織田信長』

織田信長 不器用すぎた天下人

織田信長 不器用すぎた天下人

関わりの深かった戦国大名や家臣に対する信長の振る舞いを通じて、信長の人間性を明らかにしていくという試み。方法論としてはちょっと無理があり、これだけを読んで信長のことを完璧に解き明かす! ということにはならないが、信長の意外な人間性を見ることができるだろう。この本では足りない部分については、他の金子の本などを参考にしたい。

そして各種史料から見えてくるのは、信長の意外なまでのボンクラっぷり。足利義昭上杉謙信武田信玄と仲良くしようとするも、八方美人な上にコミュニケーションが下手くそすぎてすぐ信用を失うところとか、「革命児信長」よりよっぽど親近感が持てる。やや信長の対人関係にばかり注目しすぎている感じはあるが、それだけでも信長の意外な一面を明らかにできていると思う。

第10回Twitter文学賞

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

息吹

息吹




第10回Twitter文学賞に投票しました。投票したのは伴名練『なめらかな世界と、その敵』(早川書房)およびテッド・チャン『息吹』(早川書房)です。詳しい感想は以下の書評の通り。


save-as.hatenablog.com
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自由度の高さこそGRAVITY DAZEの魅力である/「GRAVITY DAZE 2 クロウの帰結」

【PS4】GRAVITY DAZE 2 Best Hits

【PS4】GRAVITY DAZE 2 Best Hits

前作からのストーリーの補完としてはまあいいと思う。また、クロウを操作できるということ自体、ファンとしては嬉しい。ただその一方で、基本的に一本道のストーリーで自由度が低いのはわりと残念。一応マップを自由に飛び回ることができるタイミングもなくはないんだけど、まあメインではない。自由度の高さこそがGRAVITY DAZEの魅力なんだなーというのをあらためて実感した。

謎は謎のままで終わってしまった/「PSYCHO-PASS 3」

ライラプスの召命

ライラプスの召命

  • メディア: Prime Video
いやあ消化不良にもほどがあるでしょこれ。これがたとえば24分12話でやったとかなら、アニメというフォーマットの問題もあるし仕方ないと擁護できなくもないが、48分8話という変則的なフォーマットにしておいてこれだからね。時勢にあわせて移民ネタとかをいろいろ入れてきたのも、結局のところ結論部分でお茶を濁してしまってるせいで軽薄に見える。

テーマもあまりピンとこない。集団に対するサイコパスの測定っていうテーマは2期でもやっていたと思うので、あんま新鮮味を感じないんだよねー。上流階級に社会を牛耳ってマネーゲームをしている組織が存在する、っていうのもテーマとしてはだいぶ頭悪くて、もうちょっと細かく描写されるのであればまあ許せるが、描写不足のせいでただただ頭悪いだけになっている。

キャラクターは全体的には悪くないんだが、主人公の慎導灼だけはちょっとひどい。能力のメンタルトレースがほとんど超能力者めいているのは百歩譲って許すとしても、元軍人のイグナトフより身体能力高いところとかさすがに都合良すぎ。もう一人の主人公・イグナトフはいいキャラだと思うし、新しい執行官の面々もそれなりに魅力的だし、霜月課長の中間管理職っぷりとかもよかったので、全体的には悪くないんだが……。