最新のUIで遊ぶ古き良きFE/「ファイアーエムブレム風花雪月 煤闇の章」

FE風花雪月の目玉だった学園パートがなくなり、よりストイックなFEが戻ってきた感じ。兵站の制限は比較的ゆるゆるなので以前のFEほどヒリヒリはしていないが、それでも硬派なSRPGとしてのFEを、完成されたUIとともに味わうことができる。正直本編100時間ぐらいやったら学園パートにだいぶ飽きてしまったので、古いFEが逆に新鮮。また、風花雪月のファンアイテムとしても悪くはない。本編では雌雄を決することになってしまった各級長の3人を同時に動かせるというだけでも本編ファンからしたらたまらないと思うので、それだけでもやって見る価値はあると思う。

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分国法から見える戦国大名の苦悩/清水克行『戦国大名と分国法』

戦国大名と分国法 (岩波新書)

戦国大名と分国法 (岩波新書)

日本史の教科書の戦国時代のページに分国法がいろいろ乗っていたのだけれども、分国法というものが実際のところどういうものなのかはよくわかっていなかった。ふわっと地方の自治法みたいなものなのかなーと認識していた(これはそんなにめちゃくちゃな認識ではないと思う)。ところが本書を読んで、その認識は根底から覆された。

まず驚いたのは、分国法の玉石混交っぷり。今川や武田の分国法は完成度が高い一方で、結城や伊達の分国法は思わず吹き出してしまうようなレベルの内容で、清水によるキレのあるツッコミも相まってゲラゲラ笑ってしまった。そんな内容なので、「分国法」とはいいつつも法律っていうよりは家訓とかに近いとのこと。

また、戦国大名としての権力が危うくなった大名が分国法を制定している、という指摘も非常に興味深い。よくよく思い浮かべてみると、分国法を作った大名ってたしかにパッとしない大名が多いんだよねー。そして、分国法を制定していない大名のほうがよっぽど大成しているというのは、分国法なんて作ったところでたいして意味ないんだということを示唆してくれる。

というわけで、非常に面白い1冊でした。日本史を受験勉強で使った人は、その記憶が抜けないうちに読んでおくといいと思う。

史料から見えてくるボンクラ信長の実像/金子拓『織田信長』

織田信長 不器用すぎた天下人

織田信長 不器用すぎた天下人

関わりの深かった戦国大名や家臣に対する信長の振る舞いを通じて、信長の人間性を明らかにしていくという試み。方法論としてはちょっと無理があり、これだけを読んで信長のことを完璧に解き明かす! ということにはならないが、信長の意外な人間性を見ることができるだろう。この本では足りない部分については、他の金子の本などを参考にしたい。

そして各種史料から見えてくるのは、信長の意外なまでのボンクラっぷり。足利義昭上杉謙信武田信玄と仲良くしようとするも、八方美人な上にコミュニケーションが下手くそすぎてすぐ信用を失うところとか、「革命児信長」よりよっぽど親近感が持てる。やや信長の対人関係にばかり注目しすぎている感じはあるが、それだけでも信長の意外な一面を明らかにできていると思う。

第10回Twitter文学賞

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

息吹

息吹




第10回Twitter文学賞に投票しました。投票したのは伴名練『なめらかな世界と、その敵』(早川書房)およびテッド・チャン『息吹』(早川書房)です。詳しい感想は以下の書評の通り。


save-as.hatenablog.com
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自由度の高さこそGRAVITY DAZEの魅力である/「GRAVITY DAZE 2 クロウの帰結」

【PS4】GRAVITY DAZE 2 Best Hits

【PS4】GRAVITY DAZE 2 Best Hits

前作からのストーリーの補完としてはまあいいと思う。また、クロウを操作できるということ自体、ファンとしては嬉しい。ただその一方で、基本的に一本道のストーリーで自由度が低いのはわりと残念。一応マップを自由に飛び回ることができるタイミングもなくはないんだけど、まあメインではない。自由度の高さこそがGRAVITY DAZEの魅力なんだなーというのをあらためて実感した。

謎は謎のままで終わってしまった/「PSYCHO-PASS 3」

ライラプスの召命

ライラプスの召命

  • メディア: Prime Video
いやあ消化不良にもほどがあるでしょこれ。これがたとえば24分12話でやったとかなら、アニメというフォーマットの問題もあるし仕方ないと擁護できなくもないが、48分8話という変則的なフォーマットにしておいてこれだからね。時勢にあわせて移民ネタとかをいろいろ入れてきたのも、結局のところ結論部分でお茶を濁してしまってるせいで軽薄に見える。

テーマもあまりピンとこない。集団に対するサイコパスの測定っていうテーマは2期でもやっていたと思うので、あんま新鮮味を感じないんだよねー。上流階級に社会を牛耳ってマネーゲームをしている組織が存在する、っていうのもテーマとしてはだいぶ頭悪くて、もうちょっと細かく描写されるのであればまあ許せるが、描写不足のせいでただただ頭悪いだけになっている。

キャラクターは全体的には悪くないんだが、主人公の慎導灼だけはちょっとひどい。能力のメンタルトレースがほとんど超能力者めいているのは百歩譲って許すとしても、元軍人のイグナトフより身体能力高いところとかさすがに都合良すぎ。もう一人の主人公・イグナトフはいいキャラだと思うし、新しい執行官の面々もそれなりに魅力的だし、霜月課長の中間管理職っぷりとかもよかったので、全体的には悪くないんだが……。