分国法から見える戦国大名の苦悩/清水克行『戦国大名と分国法』

戦国大名と分国法 (岩波新書)

戦国大名と分国法 (岩波新書)

日本史の教科書の戦国時代のページに分国法がいろいろ乗っていたのだけれども、分国法というものが実際のところどういうものなのかはよくわかっていなかった。ふわっと地方の自治法みたいなものなのかなーと認識していた(これはそんなにめちゃくちゃな認識ではないと思う)。ところが本書を読んで、その認識は根底から覆された。

まず驚いたのは、分国法の玉石混交っぷり。今川や武田の分国法は完成度が高い一方で、結城や伊達の分国法は思わず吹き出してしまうようなレベルの内容で、清水によるキレのあるツッコミも相まってゲラゲラ笑ってしまった。そんな内容なので、「分国法」とはいいつつも法律っていうよりは家訓とかに近いとのこと。

また、戦国大名としての権力が危うくなった大名が分国法を制定している、という指摘も非常に興味深い。よくよく思い浮かべてみると、分国法を作った大名ってたしかにパッとしない大名が多いんだよねー。そして、分国法を制定していない大名のほうがよっぽど大成しているというのは、分国法なんて作ったところでたいして意味ないんだということを示唆してくれる。

というわけで、非常に面白い1冊でした。日本史を受験勉強で使った人は、その記憶が抜けないうちに読んでおくといいと思う。