純文学版湊かなえ?/今村夏子『あひる』

あひる

あひる

 

 どの短編も、短くまとまっており、それでいてなかなか破壊力がある。こういう作家は純文学系にはたくさんいそう(村田沙耶香とか藤野可織とか)に見えて、ここまで黒い話を全面に押し出すタイプの作家は意外と少ない。なので、わりと新鮮な気持ちでとても楽しめた。

 

……んだけど、ちょっと気になったのは、この小説の評価がアマゾンで思ったよりも低いこと。いやもちろん、アマゾンの評価がどれだけ低かろうが高かろうがぼくの小説に対する評価は変わらないのだけど、その一方で、自分が好きだと思った小説になぜ低評価がついているのか、ということは気になる。

で、思ったんだけど、もしかしてこの作家、イヤミス的な読まれ方をしてる? たしかにこの小説は、イヤーなモチーフの典型例をわりと普通に持ち出す(表題作における新興宗教とか、「おばあちゃんの家」における老人虐待とか)。そこら辺がイヤミスと似たような読まれ方をしているのであれば、低評価も納得(湊かなえの小説もアマゾンの評価は低い印象がある)。さらにいえば、普段イヤミスを読んでる読者層は、純文学のあまりに起伏のないストーリー展開に物足りなさを感じるのでは。そう考えると、なんかいろいろと腑に落ちた感じがした。

 

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ゲーム自体は良作でも、商品としては……/「ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン」

ポケットモンスター ウルトラムーン

ポケットモンスター ウルトラムーン

 

 このゲームは、ゲーム自体としては十分良作の範疇に入るだろう。リメイク元の「サン・ムーン」をそれなりに快適にするようなリメイクなのだから、それは当然だ。

が、それと「商品としての良さ」は別。以前なら1つのソフトとしてやっていた完全版をわざわざ2バージョン出し、追加要素もそんなに多いわけではなく、廃人に2バージョン買わせるという目的が見え見え。

さらにいうと、「サン・ムーン」から1年経たないでの発売ということで、実質的には再プレイ感を味わうことが多かったんだけど、それによって見えてくる粗がけっこうあったように感じた。とくにムービーシーンの多さは、初回プレイではわりと気にならないと思うが、2周目以降はけっこうストレスになるだろう(これは「ウルトラサン・ウルトラムーン」の問題点というよりは、「サン・ムーン」と共通の問題だが)。

総じて、ゲーム自体は良作だと思うんだけども、商品として売り方・売るタイミングなどをことごとく間違ったゲームといえるだろう。もうちょいどうにかならなかったのか……。

 

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