性格のいい人間が正義だということを痛感させられるマンガ/川端志季『宇宙を駆けるよだか(1~3)』

 

読みながら、かわいい女の子とブスな女の子の入れ替わりモノってよく見たことあるなあと変な勘違いをしていたんだけれども、よくよく考えるとぼくが知っているの松浦だるま『累』くらいでした。

『累』は性格のひん曲がったブスがかわいい女の子の肉体に入ったときのことを描いていてかなり好きなんだけど、こちらは聖人みたいな主人公・あゆみがブスな女の子の肉体に入る話なので、ちょっと共感はしづらい。でも海根さんのクズっぷりとそれに対する因果応報とか、これまた聖人である火賀くんの報われなさ(報われないって言っちゃったらアレなのかもしれないけど)とかは結構見ごたえがあるし、続きを読みたくさせる力も十分あるとは思う。性格のいい人間が正義という話が延々と繰り返されるので、性格の悪い人間(ぼくとか)はひたすら耳をふさぎたくもなるんだけど、まあその通りです。

しかしこれ、最終巻になると急に駆け足になるんだよね。入れ替わりの設定もあんまり生かされず、入れ替わりの原因になってる赤月という現象がなくなるというタイムリミットも物語的にはほとんど機能していないので、最初は打ち切りで慌てて終わらせたのかなと思ってしまった。まあ海根さんの改心が物語の山場ではあるので仕方ないという側面もあるんだけど……。あと、タイトルの「宇宙を駆ける」っていうのがほとんど川端の自己満足に終わってたのも残念(重箱っちゃあ重箱だけど)。タイトルの「宇宙」とか赤月とかで、もう少しSFっぽい作品を想像させちゃうと思う。

結局、ドロドロが好きな性格の悪い人なら『累』を、ハッピーエンドが好きな性格のいい人ならこちらを読めばかなり楽しめるのかなあ。でも、性格の悪いぼくでもまあまあ楽しめるほどには面白いと思いますよ。