すっげえこれ。
この小説はポエムに満ちあふれている。意志が運命を作るだの愛が世界を作るだの、口にするのも恥ずかしいような、そんなポエムだ。ちょっと普通の小説じゃありえないぐらいの量だ。
そしてこの小説がすごいのは、そんなポエムを「ノベライズ」してしまうところ。舞城は、歯の浮くようなポエムを、そのままこの小説の世界の法則にしてしまう。だからこの小説はブッ飛んでいる。舞城のポエム通り、意志が運命を作り空間と時間はねじ曲がり、死んだ人間は生き返り主人公は複数人に分裂する。
もうめちゃくちゃだ。
そのくせ伏線はしっかりと仕込んでるし、宇宙論をベースにしたSF設定もしっかり練られている。ミステリーとしてもSFとしても十分な出来。
そしてなにより、そんな因果律のぶっ壊れた世界にミステリーとSFをぶち込んだというグロデスクな物語の中を、舞城がデビューからずっと書き続けている「愛」というテーマが貫いている。この不器用なまでの愚直さには、ちょっと感涙せざるを得ない。
いずれにせよ、舞城王太郎の小説の中でも最高傑作だろう。GWまるまる使って1400ページの大著を読んだかいがあったものだ。