世界はポエムでできている/舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』

ディスコ探偵水曜日(上)(新潮文庫)

ディスコ探偵水曜日(上)(新潮文庫)

 
ディスコ探偵水曜日(中)(新潮文庫)

ディスコ探偵水曜日(中)(新潮文庫)

 
ディスコ探偵水曜日(下)(新潮文庫)

ディスコ探偵水曜日(下)(新潮文庫)

 

 すっげえこれ。

 この小説はポエムに満ちあふれている。意志が運命を作るだの愛が世界を作るだの、口にするのも恥ずかしいような、そんなポエムだ。ちょっと普通の小説じゃありえないぐらいの量だ。

そしてこの小説がすごいのは、そんなポエムを「ノベライズ」してしまうところ。舞城は、歯の浮くようなポエムを、そのままこの小説の世界の法則にしてしまう。だからこの小説はブッ飛んでいる。舞城のポエム通り、意志が運命を作り空間と時間はねじ曲がり、死んだ人間は生き返り主人公は複数人に分裂する。

もうめちゃくちゃだ。

 

そのくせ伏線はしっかりと仕込んでるし、宇宙論をベースにしたSF設定もしっかり練られている。ミステリーとしてもSFとしても十分な出来。

そしてなにより、そんな因果律のぶっ壊れた世界にミステリーとSFをぶち込んだというグロデスクな物語の中を、舞城がデビューからずっと書き続けている「愛」というテーマが貫いている。この不器用なまでの愚直さには、ちょっと感涙せざるを得ない。

 

いずれにせよ、舞城王太郎の小説の中でも最高傑作だろう。GWまるまる使って1400ページの大著を読んだかいがあったものだ。