何をどう扱おうとも円城塔は円城塔である/円城塔『文字渦』

文字渦

文字渦

 

 この連作短編集の特徴は2つ。1つはほとんどが文字についての小説だということで、もう1つは和風・中華風だということだ。

前者については、文字というものを徹底的にドライに扱うスタンスは、こういう作家はなかなかいないというのもあり、かなり共感できる。その一方で、短編集という形式のためか、後半になると若干飽きてくるのは欠点かもしれない。

後者については、昔の円城はけっこうカタカナ・英語多めの作風だったので、かなり新鮮な印象。もちろん円城は変に興味が幅広いタイプの人間なので(書評集を読めばわかる)、生半可じゃない知識を存分に活かしてきっちり作品を仕上げている。

とはいえ、文字を扱おうが東洋風だろうが、円城塔の小説は円城塔の小説である。題材や雰囲気が変わろうとも、良くも悪くもスタイルは変わらないので、今までの円城が好きだった人は大喜びするだろうし、今までの円城馴染めなかった人は首をひねるだけだろう。ぼくは大喜びでした。

 

 以下、特に気になった作品の感想。

「緑字」は円城のプログラマー魂を強く感じた一作。円城がプログラミング大好きなのは『プロローグ』や最近のツイッターを読んでいればよくわかるが、それをこういう風に「翻訳」するとは。すばらしいです。

「闘字」は、これほとんどポケモンのパロディだよねえ。まあまあおもしろいけど、パロディがわからない人にどれくらい響くかは不明。

ツイッターでもかなり話題になった「誤字」は、まあ一発アイデアではあるがそれでもおもしろい。あとけっこう凝ってて(当たり前なんだけど)、泡坂妻夫『しあわせの書』を思い出した。

「金字」バーチャル仏教の話で、悪ノリ感はかなり強いんだけど、けっこう楽しめる。この本はほとんど字の話をしているんだけど、「金字」だけは字の要素が比較的薄めなので、かえってそれが新鮮なのかもしれない。

「幻字」『犬神家の一族』のパロディなんだけど、あれをこんなめちゃくちゃに改造するか〜〜〜という感じ。一応ミステリーなのにトリックから語り口まで何もかもが円城塔的なのは奇妙でおもしろい。あと参考文献に堂々と『犬神家の一族』と書いてあったのには笑った。

 

プロローグ (文春文庫)

プロローグ (文春文庫)