蘇部健一の面白がり方がようやくわかったかも/蘇部健一『六とん2』

六とん2 (講談社文庫)

六とん2 (講談社文庫)

 

 一応『六枚のとんかつ』は既読だが、続きを読んでなかったので今更ながら読んだ。で、今まで蘇部健一の読み方ってよくわかっていなかったんだけど、なんとなく面白がり方がわかったかもしれない。

 

 蘇部健一の提示する謎って基本的には(悪い意味で)バカで、まあ小学生が思いつくようなくだらない話ではある。ただ面白いのは、一部の短編では探偵役がそれに負けず劣らずバカで、斜め下の推理を披露してしまうところにある。この本でいうと「最後の事件」とかがそれにあたる。あるいは『六枚のとんかつ』収録の大傑作(?)「しおかぜ⑰号四十九分の壁」とかもそう。

ミステリーで探偵役がバカっていうのはなかなかない。探偵役の愚かさに焦点をあてた作品として米澤穂信『愚者のエンドロール』とかがあったりするけど、蘇部の探偵役のバカさはそれとはちがって本当にバカなだけ。だからこそ、「くだらないトリックを探偵役が下回る」という独自性が生まれる。

ただ問題なのは、おそらく蘇部自身がその面白みを自覚していないところだろう。そのためこの短編集でも7割くらいは、ただくだらないだけのゴミと言わざるを得ない。なのでぼくたちは、そのゴミの中から砂金を漁らなければいけないのだ。

 

六枚のとんかつ (講談社文庫)

六枚のとんかつ (講談社文庫)