半自動食人百合物語生成機/矢部嵩『〔少女庭国〕』

〔少女庭国〕

〔少女庭国〕

 

 おもしろい。ポリコレ的には女子中学生という存在を悪い趣味のために弄ぶ創作物なので非常にアレですが、ともかくおもしろい。不条理な設定の中でのバトルロイヤルを延々と突き詰めていったら、少女たちは殺し合いには飽き足らず町を作るわ共同体を作るは奴隷制度を作るわ食人をするわでとんでもない物語が展開されていく。そしてその中に、ほのかな百合も忘れない。

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スプラトゥーンってまだまだいろんな遊び方ができるんだね/「スプラトゥーン2 オクト・エキスパンション」

 値段の割には十分面白かった。インクを撃って敵を倒す、というシンプルなゲーム性をもとに、「メタルギアソリッド」みたいなステルスゲーからビリヤードまで、バリエーション豊富なミニゲームを作れるというのは、やはりすごい。スプラトゥーンってまだまだいろんな遊び方ができるんだね、ということを実感させてくれる。これでマリオメーカーみたいに好きな遊び方を開発できるツールがあれば……(流石に無理か)。

あと、コンプリートはともかく単純にクリアするだけならそんなに時間がかからない、というステージ構成もポイント高い。プレイヤーの中には、実際はミニゲームにはそこまで興味なくて、とにかくクリア特典のタコを使いたい、という人もいるだろうから、そういうふうに楽させてくれるのはよいこと。

リスク分散としてのフェミニズム(と、渡部直己のセクハラ問題)

早稲田文学増刊 女性号 (単行本)

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 要約

「女性(あるいはフェミニスト)が一体となって抗議する運動」は、「その運動に参加することによって不利益を被る人」以外の人が抗議しやすいため、リスク分散装置として機能する。なので文学関係者以外のフェミニストは、ちゃんと渡部直己早稲田大学に抗議しましょうね。

 

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理不尽な暴力にさらされるだけの映画/ミヒャエル・ハネケ「ファニーゲーム」

ファニーゲーム [DVD]

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最初から最後まで何がやりたいのかよくわからなかった。主人公一家を極めて理不尽な暴力が襲うんだけど、それで終わり。悪い意味で変な映画だと思う。

 また、いくつかのメタ演出もあまりうまくない。とくに巻き戻しの部分にはほんとうにがっかりした。ハネケの他の作品でぼくが唯一観たことのある「隠された記憶」ではメタ演出がわりとうまくハマっていたと思うんだけど、「ファニーゲーム」はダメな部類に入ると思う。メタ演出のためのメタ演出が面白いわけがないのだ。

唯一良かったのは中盤の長回しシーン。子供が殺された悲しみが、淡々とした長回しによってこの上ないぐらい強調されており、このシーンだけは見入ってしまった。

楽しかった鑑賞体験は認知的不協和を発生させる/S・S・ラージャマウリ「バーフバリ 伝説誕生」

 わりとおもしろかった。やたらアクションシーンにスローモーションが多いとか、最初の滝を登るシーンがいくらなんでもバカすぎるだろとか、まあいろいろ不満はあるんだけど、歌と踊りとアクションのおかげで全然許せる。本格的なインド映画は3~4時間も延々と歌って踊ってる、みたいな噂を聞いたことがあるので、2時間ちょっとでインド映画をカジュアに楽しめるというのはいいこと。

でも、巷にいわれているほど絶賛するほどでもないかなあ。とくに、後半のパパバーフバリパートはあまりにもよくある話すぎて飽きちゃう。前半パートはアクションも無茶苦茶ながらも、それなりに面白みのある動き方をしているんですが、後半だとよくある動きばっかでそんなに面白くない。

あと、見ていてしんどかったのがヒロイン・アヴァンティカ(タマンナー)周りの描き方。勇敢な戦士であるアヴァンティカを無理やり戦闘服を脱がせて化粧をさせて、最終的に一人で城に乗り込んじゃうバーフバリのマチズモには、わりと顔をしかめてしまった。ただまあ、男尊女卑がすさまじいインドの映画だし、これぐらいのマチズモはあってもしょうがないかなあ……。

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