半自動食人百合物語生成機／矢部嵩『〔少女庭国〕』
おもしろい。ポリコレ的には女子中学生という存在を悪い趣味のために弄ぶ創作物なので非常にアレですが、ともかくおもしろい。不条理な設定の中でのバトルロイヤルを延々と突き詰めていったら、少女たちは殺し合いには飽き足らず町を作るわ共同体を作るは奴隷制度を作るわ食人をするわでとんでもない物語が展開されていく。そしてその中に、ほのかな百合も忘れない。
前半の短編（？）「少女庭国」は、一人の少女の物語である。わりと淡々とした物語ではあるが、その淡白さがかえって情緒を深めており、味わい深い。薄味だが。
しかし真にすごいのは後半の「少女庭国補遺」。これは本当にすごくて、不条理な設定から生み出されるような物語を延々と羅列する話である。そして少女たちの「庭国」はどんどん大きくなる。こんなバトルロイヤルちっくな設定から、まさかここまで壮大な神話的物語が出てくるとは思わなかった。ややオチは弱いような気がするが、満足です。
