読んだ本(2021/5)

5月に読んだ本のまとめ。

アゴタ・クリストフ『第三の嘘』(ハヤカワepi文庫、2006年)

話がどんどんメタフィクション的に凝っていくのだけれども、簡素な文体と相性が悪いと思う。

杉田敦『デモクラシーの論じ方』(ちくま新書、2001年)

「デモクラシーの一概にはいえなさ」をそのまま書籍化した奇妙な対話本。詳細はここ

法月綸太郎『生首に聞いてみろ』(角川文庫、2007年)

うーんまあ新本格ミステリって感じ。かなり気合は入っているのでそれなりに読み応えはある。

小川洋子『物語の役割』(ちくまプリマー新書、2007年)

悪い意味で宗教的。サムシンググレートか言い出すの勘弁してくれー。

貴志祐介『黒い家』(角川ホラー文庫、1998年)

保険会社視点の保険金殺人ミステリーって珍しい。詳細はここ

大森望豊崎由美文学賞メッタ斬り!』(ちくま文庫、2008年)

かなり手広い文学賞ガイド。当時あった文学賞を漏らすまいという貪欲さを感じる。似たような文学賞の細かな違いまで解説されているのがいいところだと思う。

高野一枝『システムエンジニアは司書のパートナー』(郵研社、2018年)

著者は元NECのSEで、図書館のシステム開発をしてきたとのこと。図書館好きのぼくとしてはとても面白そうだなと思ったんだが、期待はずれ。SE経験があまり活かされておらず、よくある図書館エッセイ本になってしまっていて残念。web連載の書籍化なので、著者の責任だけではなく編集者の要求がまずかった可能性もあるので、ガッツリSE目線からの本が読みたいなー。

辻村深月『ふちなしのかがみ』(角川文庫、2012年)

「おとうさん、したいがあるよ」は、辻村らしさと辻村らしくなさが同居した怪作。辻村らしい生真面目な文体で不条理な出来事を丁寧に書いているんだけど、認知症を話の中核に持ってきたり当然のように死体遺棄をするというのが妙に不謹慎で、ゲラゲラ笑いながら読んでしまった。他はまあ辻村深月ーって感じ。

小山田浩子『工場』(新潮文庫、2018年)

表題作「工場」はかなり評判がいい小説なんだが、ちょっとウソ臭さが強すぎる感じはした。一方それ以外の2作はけっこうよかった。特に「いこぼれのむし」は、不条理小説に1歩踏み出しつつもうまいところで踏みとどまっていてよかった。

千葉雅也『メイキング・オブ・勉強の哲学』(文藝春秋、2018年)

一応読んだけど、いやはやなんとも。

江永泉ほか『闇の自己啓発』(早川書房、2021年)

題名に反し、全体的には誠実な読書会ログという感じで、好感が持てるし勉強にもなる。だからこそひでシスの不謹慎芸のスべりっぷりは痛々しいし、悪い意味で露悪的な題名も気になる。

内田樹『寝ながら学べる構造主義』(文春新書、2002年)

まあ基本的にあまり真面目な本ではないので、勉強目的なら岡本裕一朗『フランス現代思想史』とかを読むべき。それでもちょっとおもしろいところはあって、特にロラン・バルトについての記述は「作者の死」をコピーライトとかキリスト教とかと絡めていたりしてかなり独創的(雑語りっぽいのであまり信用はできないが)。あと、構造主義前史としてマルクスニーチェを挙げていたのは珍しい感じはする。