くさや/「Getting Over It with Bennett Foddy」

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ゲームの根本にある哲学やゲーム性、そして巧みなマップデザインに不条理な世界観など、さまざまな長所があるのだけど、絶望的な操作性の悪さがすべてをぶち壊しており、クソゲー一歩手前といってもいいとは思う。ただ、このゲームの操作性を良くしたらすばらしいゲームになるかといわれるとそうとも言い切れなく、独特な魅力が抜けてしまうのではないかと思わなくもない。まあくさやみたいなもんかなあ。

経営目線での分析が得意な飯田の本領発揮/飯田一史『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』

最近どんどん存在感を増しているマンガアプリの現状分析の本。各種マネタイズの手法についての鮮やかな分析は、経営目線での分析が得意な飯田の本領発揮といったところ。また、飯田は作品分析をするとわりと平凡なことしかいえない印象があるのだけれども、本書では作品分析をほとんど行わず、経営的な分析に注力しているため、ほかの本よりも雑味がない。

ジェネリックまどマギ/「結城友奈は勇者である」

第1話「乙女の真心」

第1話「乙女の真心」

  • 発売日: 2017/10/01
  • メディア: Prime Video
まあジェネリックまどマギって感じ。神道っぽいモチーフを使って不穏さを醸し出しているところや、「マブラヴ オルタネイティヴ」みたいな敵の造形はよかった。ただ、話の展開が「まどマギ」に比べてだいぶ遅いので、前半がややダレ気味。

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だいぶ不条理度高めの短編集/今村夏子『木になった亜沙』

木になった亜沙 (文春e-book)

木になった亜沙 (文春e-book)

『あひる』とか『むらさきのスカートの女』とかよりもだいぶ不条理度高め。今村夏子って基本的にはリアリズムの作家だと思っていたので意外だった。とはいえ面白い。表題作「木になった亜沙」「的になった七未」のプロットがほとんど同じだという難はあるものの、全体的には満足度が高い。

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ザコ戦とボス戦で戦闘システムが違うのはどうかと/「ペーパーマリオ オリガミキング」

戦闘システムは微妙。そもそもザコ戦とボス戦で戦闘システムが違うのはどうかと。ボス戦は、ちゃんとパズルとターン制RPGが組み合わさったような戦闘になっていて、けっこうやりごたえがある。一方でザコ戦は、単調なパズルの比重が高く、面白みが薄い。

ストーリーは「ペーパーマリオRPG」や「スーパーペーパーマリオ」の路線を引き継いでくれていてわりとよかった。だからこそ、仲間がボム兵カメックみたいに個性のないキャラクターだったのはもったいないと思う。

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いい意味で「実用的な自己啓発書」/千葉雅也『勉強の哲学』

ドゥルーズだのラカンだのの言葉を安易に借りずに、自分の言葉で「勉強」とは何かを明確にしていく感じは、いい意味で古典的な哲学っぽいなと思った。また、論理性を重視し続けた結果机上論としての面白みしかない、みたいな哲学にありがちなダメさに陥っておらず、しっかり地に足のついた議論になっている。一応哲学を自称しているが、どちらかというと自己啓発本とか実用書に近い感じはする。文体がだいぶゆるいので、そこは好みが分かれるかも。

病気の複雑さを、「複雑なままわかりやすく」伝える本/市原真『どこからが病気なの?』

病気の複雑さを、「複雑なままわかりやすく」伝えるという面白い本。病気は複雑なものだという視点から、そこから現実的な病気との付き合い方を探るという試みは、知的におもしろいと同時に、実用的でもある。正しいが面白くない医学的な正論とも、知的遊戯としての価値はあるが病人には役に立たない哲学的な思索とも異なる。

また、医者の視点を患者に伝えるという部分もうまくできている。医者が患者の病気を特定するプロセスの解説は、医者はぼくたちと同じ生物なのだから、エスパー的に患者の病気を見通すことはできないという当たり前の事実を思い出させてくれる。まあ若干医者の肩を持っている感はなくもないが、著者も医者なのでそこはしょうがない。